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【大手証券決算比較】2020年3月期本決算(野村、大和、日興、みずほ、三菱UFJ)

大手証券5社の2020年3月期の決算を比較、解説します。

特に1〜3月はコロナウイルスの感染拡大の真っ只中でしたが、ダメージを受けた証券はあったのでしょうか。

 

当サイトでは転職やキャリアに関する記事を中心とし、金融業界やコンサル業界について解説する記事も投稿中です。

以前、証券会社の決算の解説が好評だったので、第二弾です。

 

今回は日系の証券大手5社の2020年3月期の決算が開示されたので、解説します。

5社とは、野村證券、大和証券、SMBC日興証券、みずほ証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券です。

どうぞご覧ください。

 

※2020年3月期 第2四半期決算はこちら。

 

 

1.大手証券の5社比較

まずは2020年3月期の第4四半期(2020年1〜3月)の業績を、5社で比較してみましょう。コロナウイルスの拡大の真っ只中でしたね。

まず、収益です。青色の棒グラフをご覧ください。

2020年3月期 第4四半期の比較

一般企業の売り上げに相当する数字である「収益(金融費用控除後)」を見ますと、やはり野村證券が頭二つ、三つ秀でており、次に大和証券。

その他の3社は、どんぐりの背くらべ状態です。

この構図、順位はいつも通りといった感じで、下克上はありませんでした。

利益も見てみます(税引前の当期純利益で比べています)。

黄色の棒グラフです。

大和証券が199億円の利益を確保した一方、最大手の野村がなんと赤字に転落していることが目を引きますね。

野村證券の赤字は(後で解説しますが)、コロナによるマーケットの大荒れで投資用で持っていた会社の株式が下落した要因が大きいですね。

また今回は三菱UFJモルガン・スタンレー証券が利益額ではトップ。近年不調でしたから、大きな躍進でした。

さらに言えば、この三菱とみずほ証券は、この数字には含まれないアメリカの関連会社があるんです(米国の規制で決算の合算ができない)。

このアメリカの会社で、みずほ証券は35億円、三菱は39億円の経常利益をたたき出しているので、実態では三菱は270億円前後の大きな利益を出せていると言えるでしょう。

次に、2020年3月期の通年をご覧ください。

2019年4月〜2020年3月末の1年間の数字です。

2020年3月期 通年業績の比較

収益も利益も、野村證券が飛び抜けていますね。

よく見れば大和とその他3社もそこそこ差があるんですが、まあホストのROLAND風に言えば「野村か、野村以外か」という状態は相変わらずです。

先ほどアメリカの会社に触れましたが、通年ではみずほ証券inアメリカで273億円三菱inアメリカで87億円の経常利益があるので、実態ベースではこの2つを足してみてあげると良いでしょう。

この数字を鑑みれば、3メガバンク系の証券では、SMBC日興がやや後塵を拝している状況と言えなくもありません(わずかですが...)。

それでは、次より各社別で細かく見ていきますね。

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2.野村證券

野村證券を傘下に持つ野村ホールディングスは、国内最大の証券グループです。

2020年3月期の通年業績は

  • 収益:1兆2,879億円
  • 税引前利益:2,483億円
  • 当期純利益:2,170億円

2020年3月期の第4四半期(2020年1〜3月)だけで見ると

  • 収益:2,375億円
  • 税引前利益:▲247億円
  • 当期純利益:▲345億円
野村證券 業績推移 決算説明資料より筆者作成

2018年の年末から2019年初頭にかけて米中の貿易摩擦や新興国マーケットが大荒れで、どの証券会社もボロボロだったことはご記憶にあるかもしれません。ちょうど黄色のグラフの利益が赤字になってしまっているあたりの話です。

そこから徐々に回復していた中で、2020年3月期の前半はいい感じでした。

が、残念なことに後半にかけてガクッと落ちてしまいました。

では、ガクッとコケたのは、何が悪かったのでしょうか。

野村のビジネス部門は大きく4つに分けられます。

  • ホールセール部門
  • リテール営業部門
  • アセットマネジメント部門
  • その他部門

順番が前後しますが、注目点を述べていきます。

アセットマネジメント部門

実は、赤字の要因はこのアセットマネジメント部門です。

野村はアメリカン・センチュリー・インベストメンツとの提携をしていて、当社の株を持っているのですが、今回のマーケット混乱もあり、その評価額が▲164億円も出てしまいました

結果的に、これが大ダメージだったようです。

また、「その他部門」でも、めぶきフィナンシャルグループの株式の評価損が▲64億円あったようです。

どちらかと言えば、本業とは離れた部分での、運用の評価損に苦しんだ格好ですね。

ホールセール部門

野村證券ホールセール部門 業績推移 決算説明資料より筆者作成

核の部門の一つであるホールセール部門は比較的持ちこたえた印象です。

野村のホールセール部門は、グローバルマーケッツとインベストメントバンキングの2つの分野がありますが、コロナの事でマーケットは大荒れしたものの、グローバルマーケッツ分野の業績は大きな変化はなかったようです。

一方のインベストメントバンキング分野では、コロナもありIPOなどの案件が激減したようです。持っていたローンのポジションからも評価損失が出たことで、比較的ダメージを受けています。

リテール部門

野村證券リテール部門 業績推移 決算説明資料より筆者作成

 

野村の最も核となるビジネスであるリテール営業部門です。

普段は、高齢者や富裕層のご自宅に出かけて行って、投資の案内営業をしています。

「株買いませんか」「投資信託買いませんか」

 

しかしコロナによる営業自粛があり、店舗を閉めていましたよね。

まさか高齢者のご自宅にこんにちわするわけにもいかない情勢でしたので、営業が思うようにできなかったはず

よって僕自身も、このリテール部門はかなり落ち込んでいるんだろうと思っておりました。

 

しかし意外にも、数字上は全くと言っていいほどコロナ影響が見られません。2020年は、前半よりもむしろ後半の方ががいいくらいです。

予想外でした。

 

当サイトでは従来からご紹介しているように、野村證券はリテール営業マンの編成を2019年の夏に大胆に変更しました。

どのように変更したのか、簡単に言えば、今まで普通の高齢者からすごい富裕層まで様々な客を一人の営業マンが見ていたのですが、それを「君は金持ち客だけ」とか「お前は企業の社長だけ担当な」というように、「特徴や属性が似た客を、一人の営業マンが担当する仕組み」にしたのです。

これによって、いい客をもらえなかった営業マンは完全に小口客のみになり、そうでない営業マンの格差は開いてしまうことになる、何とも無慈悲な仕組みです。

とは言え、似た客とだけ話をすればいいいので、マクロ的には効率や専門性は上がるようです。

 

この取組みは業界内でも注目されているようで、こういった大胆な改革がリテール部門の業績をガッチリと支えているのかもしれません。

 

それに、今や電話やメール、SKYPEなど様々なツールが身近にある時代です。

営業マンは黒いカバンにスーツ姿で、汗をかきながら営業回りをし続ける、ザ・オールド営業は必ずしも必要ないということなのかもしれません。

今後はZoomやSkypeなどでのテレ営業が活発化することでしょう。

 

3.大和証券

2020年3月期の通年業績は

  • 収益:4,262億円
  • 税引前利益:848億円
  • 当期純利益:603億円

2020年3月期の第4四半期(2020年1〜3月)だけで見ると

  • 収益:1,101億円
  • 税引前利益:199億円
  • 当期純利益:112億円

2020年3月期の1年では、収益も利益も業界第2位の地位をしっかりと守り抜きました

大和証券 業績推移 決算説明資料より筆者作成

 

収益について、2018年3月期に1,350億円をつけてから、それからずっと下火。下がり続け、2020年3月期の第2Qではついに1,000億円を切ってしまうという心配な展開だったのでした。

しかしその後、2020年3月期の後半は盛り返しています。

利益面は3~4年前と比較すると、ややさみしいかな〜感は拭えないものの、コロナによるマーケットの混乱や、自粛・店舗閉鎖によっての大きなダメージは特段ないように見えます。

 

大和証券のメイン部門は4つ。

  • リテール部門
  • ホールセール部門
  • アセットマネジメント部門
  • 投資部門

このうち、ビジネス規模としては、リテール部門とホールセール部門で8割くらいを占めるので、この2つを見ていきましょう。

 

リテール部門

大和証券リテール部門 業績推移 決算説明資料より筆者作成

リテール部門は大和証券内で4割弱を占めるくらいの規模であり、まさに中核ビジネスです。

2年ほど前は600億円ほどの収益を出していたクオーターもありました。

その後は1四半期あたり400億円程度まで下がり、現在もその水準を維持しているような状態です。利益額も大きくは変化ないように見えます。

2020年1~3月のコロナ渦中においても、収益や利益面で大きなインパクトは見られなかったようです。

大和証券も店舗を相応に閉めたり、営業マンは在宅での仕事が増えたはずですが、野村證券と同じでコロナが業績に大きなダメージを与えたとは言えなさそうです。

ところで、

「なんだ、実はリアル店舗って必要ないんじゃん。出勤ってムダだったんだね」

このように「在宅ワークや店舗が無くたって、証券のリテール営業は問題ないのだ」と結論づけていいでしょうか

個人的には、まだ早いと思っています。というのも、今回のようにマーケット動揺の時期には、当然個人客が株を売ったり、買ったりする運用アクティビティは増加します。

客がよく動いてくれれば証券会社は手数料が入るので、マーケット混乱期は収益的には良いでしょう。

しかし、じゃあ常時店を閉めてもOKかと聞かれると、そうではないでしょう。

マーケットが動かない時期もあるでしょうし、そういう時は営業マンが能動的にお客の居宅に訪問セールスし、色んな投資提案をする必要があるはずです。

この問題は、面と向かって営業する、いわゆる「対面営業のあり方」に関わる大きな問題です。当然コロナ影響により、証券の営業や勤務スタイルになんらかの変化は起こっていくでしょうけどね。

いずれにしても、この1~3月のリテール部門は、コロナによって大きなダメージを受けることは免れたようです。

ホールセール部門

この部門は大和証券の中で4割程度の規模であり、中核部門です。

マーケットが荒れたことによりお客のアクティビティが活発化し、エクイティ収差が伸びましたが、投資銀行ビジネスでの引き受け案件などがかなり減少したようで、やや数字を落としています。

とは言え、1~3月は大打撃を受けたというほどの減収減益ではないですかね。

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4.SMBC日興証券

業界で3位と言われるSMBC日興証券、

三井住友フィナンシャルグループの傘下であり、メガバンク系証券とも言われます。

2020年3月期の通年業績は

  • 収益:3,160億円
  • 税引前利益:504億円
  • 当期純利益:392億円

2020年3月期の第4四半期(2020年1〜3月)だけで見ると

  • 収益:817億円
  • 税引前利益:131億円
  • 当期純利益:116億円
SMBC日興証券 業績推移 決算説明資料より筆者作成

SMBC日興証券は部門別の実績を開示していないです。よって細かくは分からないですが、2020年3月期の後半は堅調に推移したという感じです。

コロナ影響によるダメージは、リテール営業分野でもホールセール分野でも、そこまで大きくは見られなかったようですね。

開示資料を見ると、確かに株式の引き受けなどが不調だったようですが、投資家の動き自体は活発だったので株式委託手数料、投信募集手数料は増加したか、またはほとんどダメージを受けていないことが分かります。

トレーディング損益を見ても、マーケット混乱とクレジットスプレッドのワイドニングの中で、ポジションをうまくコントロールすることでうまく乗り切っている様子の記載があります。

5.みずほ証券

みずほフィナンシャルグループ傘下のメガバンク証券です。

2020年3月期の通年業績は

  • 収益:2,820億円
  • 税引前利益:291億円
  • 当期純利益:214億円

2020年3月期の第4四半期(2020年1〜3月)だけで見ると

  • 収益:677億円
  • 税引前利益:34億円
  • 当期純利益:11億円
みずほ証券 業績推移 決算説明資料より筆者作成

他の証券が四半期あたり最低100億円前後の利益を出している中で、この第4四半期のみずほ証券の最終利益は11億円と、なかなかのさみしい結果となりました。

みずほの部門は3つ。

  • グローバル投資銀行
  • グローバルマーケッツ
  • リテール・事業法人

1~3月の業績を見ると他社と同様、リテール部門へのコロナからのダメージはほぼ見られません

が、投資銀行分野での案件が少なくなったことで、やや減収。

利益の足を引っぱった最大の要因は、グローバルマーケッツ部門でしょう。マーケットによるクレジットスプレッド拡大にうまく対処できず、特にヨーロッパで損失を計上したことが足を引っ張っています

みずほの海外事業は、「赤字を出すのはヨーロッパ」という感じになっているので、今後はテコ入れを進めていくか、野村のようにヨーロッパ事業を縮小するか、選択を迫られることがあるかもしれませんね。

補足で、決算の数字には含められない、米国の関連証券会社を見ておきます。米国みずほ証券、MSUSAですね。

この1年の経常利益ベースの推移ですが、69億→91億円→76億円、そして直近は35億円

やや下がりましたけど、米国事業はなんとか持ちこたえた形ですね。

6.三菱UFJモルガン・スタンレー証券

三菱UFJフィナンシャルグループ傘下の証券会社です。

2020年3月期の通年業績は

  • 収益:3,222億円
  • 税引前利益:477億円
  • 当期純利益:211億円

2020年3月期の第4四半期(2020年1〜3月)だけで見ると

  • 収益:945億円
  • 税引前利益:235億円
  • 当期純利益:106億円
三菱UFJモルガン 業績推移 決算説明資料より筆者作成

2020年の最初をボトムに、収益も利益も右肩上がりに回復しています。

一見すると「え、コロナ?何それ?」という雰囲気ですね。

三菱のメイン部門は3つ。

  • 国内営業(リテール)
  • グローバルマーケッツ
  • インベストメントバンキング

三菱も部門別の詳しい業績の内訳を示していないんですが、ホームページの資料に、部門別の収益推移をグラフ化してあるので、それを掲載します。

三菱UFJモルガン 決算説明資料より抜粋

(この数字は、本来合算できないアメリカ関連会社を手で足している数字のようです)

 

収益の推移のグラフなので、利益がでているか(黒字かどうか)は分からないですが、一応どの部門もコロナ影響を感じさせない堅調な伸びです。

 

ご覧いただけばお分かりの通り、2020年3月期の最初がボトムになっていますよね。この時は、社員によれば「大きな成績目標ルールの変更があった」ようです。

どんな変更かと言えば、「収益ノルマを完全廃止」です。

要するに手数料獲得をノルマにしない業績評価ルールにしたんです(近年はかんぽ生命の問題で「ノルマ」というものが問題視されましたが、その影響もあるでしょう)。

 

この問題は根が深いですよ。

かいつまんで言えば「いくら稼いだか」ではなくて「いくら運用をしてもらったか」という目標ルールに変えたわけです。

この業界をご存知ない方は「それ、どう違うの?」と疑問を持たれると思います。

 

例えば、「いくら稼いだか」で評価されるのであれば、同じお客さんに1,000万円で株を買ってもらい、それをすぐに売らせる。そしてまた繰り返し買ってもらって、売ってもらって、を検り返していれば、手数料は稼げてしまうんですよ。

よって、一人のお客さんをカモにしやすいんですね。

 

しかし「いくら運用をしてもらったか」という基準になれば、同じお客さんの「売って買って」をり返したところで、全く成績に加味されないのです。

同じお客さんの1,000万円を使って、繰り返し「売って買って」させることを業界用語では「回転売買」と言ったりしますが、これが世間的に問題視されたわけです。

 

2020年の最初が大きく落ち込んでいるのは、このルール変更が理由です。長い間慣れ親しんだルールやセールス手法が使えなくなり、収益目標がなくなって、まさに営業マンが「目標を見失った状態」だったと言います。

しかしルールに徐々に順応し、新しいセールス手法を確立してきた営業マンが増え、業績が回復してきたおかげで、結果として2020年3月期は右肩上がりの回復を見せることが出来ました

 

7.まとめ

 

日系の大手証券会社の5社の2020年3月期の決算を比較しました。

コロナ影響は今のところ、そこまで数字に表れていないように思います。

 

しかし、この状態が長引き、相場も悪い状態のまま落ち着いてしまえば、やはり収益機会に乏しくなり、核のリテール営業への影響は徐々に出てくる可能性があります

また、常に新規の顧客を発掘することが非常に重要ですが、そう言った顧客開拓も自粛を続けていれば難しいでしょう。

 

コロナウイルスが落ち着き、緊急事態宣言が解除となったあとも、全く元どおりの世界には戻らないと思います。

そう言った意味で、新時代のセールスをいち早く確立できる会社が、大きくシェアを伸ばすチャンスが今まさに到来しているのかもしれません。

 

おわり

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